「由衣様、今度は武道の技を使って攻撃をしかけますので、防御してみてください。反撃も構いません」十一は心を引き締めた。
この時、十一は雨宮由衣の戦い方を把握していた。今度こそ、自分が不利になることはないと確信していた。
「私のこの武道は瞬間三回掌法と言って、一瞬で三回の掌撃を繰り出すことができます。由衣様、よく見て、よく学んでください」武道の掌法の細かい部分を雨宮由衣に説明した後、十一は突然一撃を放った。
十一のこの一撃は驚くほど速く、空気を切り裂く音が雨宮由衣の耳に届いた。
一瞬のうちに、雨宮由衣の頭の中は真っ白になり、周りの全てが止まったかのように感じた。十一の勢いのある一撃が、雨宮由衣の目にはスローモーションのように映った。
本能的に、雨宮由衣は一撃を放った。
この一撃は、十一の掌法の軌道を避け、極めて巧妙な角度で、十一の頭部に強烈に命中した。
「バン」!
軽い音が響き、暗殺衛士たちが目を見開いて見守る中、彼らの隊長である十一は、十数歩も吹き飛ばされた!
十一は立ち上がると、目を見開いて雨宮由衣を見つめ、信じられない様子だった。
十一の印象では、雨宮由衣は単に普通の人より力が強いだけだったはずなのに……
しかし先ほどの雨宮由衣の一撃は、極限まで速く、余計な技巧は一切なく、簡潔明瞭で、まるで本物の殺人者のようだった……!
「これは……どうして……」十一は驚きの表情を浮かべた。
十一だけでなく、雨宮由衣自身も、その場に立ち尽くし、無意識に自分の両拳を見つめた。
先ほどの一瞬は、彼女の意図的な行動ではなく、体が本能的に反応しただけだった……
さらに、十一が見せた掌法は、彼女の目には隙だらけに見え、子供の遊びと変わらないように感じられた……
「今、何が起きたんだ?」
「わ……わからない……」
「たしか、由衣様が……一撃で十一隊長を吹き飛ばしたような……」
「偶然だろう……」
「きっと偶然だ!」
暗殺衛士たちは顔を見合わせた。
十一は眉間にしわを寄せ、その場に立つ雨宮由衣を見つめながら、暗殺衛士たちの偶然という言葉を、いくらか信じようとした。
「由衣様……先ほどは、どうやったのですか?」十一は尋ねた。
「私にもわかりません……」雨宮由衣は無邪気な表情を浮かべた。
「では、もう一度!」十一は諦めなかった。