第43章 許家の危機

「弟子よ、今は急いで家に戻り、この件を処理すべきだ」

李玄は諭すように言った。

「はい、すぐに帰らなければ！」

許炎は我に返り、即座に言った。「師匠、弟子は家に戻ってこの件を処理し、終わり次第また戻ってまいります！」

「行くがよい！」

李玄は頷いた。

「では彼らは……」

許炎は麻衣の老人と知事を見て、顔を曇らせながら言った。

「気にするな」

李玄は首を振った。

「はい、師匠！」

許炎は深々と礼をした後、身を翻すと、瞬時に闇夜の中に消えた。

彼は馬に乗らず、直接軽鴻身法を使った。今の彼の実力なら、馬よりもずっと速く移動できる。

急いで家に帰るため、当然軽鴻身法を使ったのだ。

麻衣の老人たちは既に恐れおののいていた。許君河の馬鹿息子が、なぜこれほど強いのか？

本当に隠世の高人に出会ったのか？

この世に、本当に話本に伝わるような、強大無比な高人と武道が存在するのか？

くそっ、一体誰の頭がおかしいんだ？

その時、天母教の高手たちは皆、人生を疑い始めていた。

許炎が去ると、李玄はにこにこしながら、麻衣の老人を引き寄せて言った。「そこに立ってないで、入って話でもしようじゃないか」

「いえ、前輩、私たちには用事が…苦しむ民を救済しに…そう、苦しむ民を救済しに行かねば！」

麻衣の老人は冷や汗を流しながら言った。

目の前の若者は、若く見えるが、極めて危険な老怪物である可能性が高い。

許炎というあの馬鹿者が、これほど強大で、常識を超えた実力の持ち主なのだから、その師匠も常識では計れない存在に違いない。

「本当に民を救済するのかな？」

李玄はにこやかに言った。

「はい、はい、確かに民を救済します」

麻衣の老人は体を震わせながら答えた。

雲山知事は地面から這い上がり、おずおずと後ずさりしながら逃げ出そうとした。

「ああ、雲山知事、ちょっとこちらへ」

李玄は手に持つ玉如意を振りながら呼びかけた。

「前輩、何なりとお申し付けください。私めが必ずや！」

雲山知事は頭を下げ、へいへいと媚びを売るように言った。

「慌てることはない。皆で入って話そう。天母教のことなどについて……」

李玄の気血が漲ると、形のない威圧が、その場にいる全員を包み込んだ。

「は、はい！」