林逸は痛くはなかったものの、苦笑いを浮かべた。唐韻は自分のことを良く思っていないようだ!
朝はまだ純粋な恋を育もうと思っていたのに……こんなに早く夢が破れてしまった。
どうやら唐韻はもう無理そうだ。残るは陳雨舒一人だけど、それも難しそうだ……
「大將、どうして唐韻はあんなに怨みを持っているように見えるんだ?」
康曉波にはよく分からなかった。林逸と唐韻は以前知り合いではなかったのに、なぜ出会った時から唐韻は林逸に対して眉をひそめているのか?
「俺にも分かれば、問題は解決してるさ」
林逸は呆れながら説明した。
「そうだな。あっ?大將、もしかして唐韻は君のことが好きなんじゃないか?」
康曉波が突然言い出した。
「え?好き?どういうこと?」
林逸は驚いて康曉波を見つめた。
「学校の先輩の話なんだけど、クラスの女子委員が彼のことを好きで、いつも彼に文句を付けてたんだって。彼が授業をサボったりすると、その女子委員に説教されたらしい……」
康曉波は言った。「唐韻もそうじゃないかな?」
林逸は白目を向けた。物事は事実に基づいて判断しないと。
「その話は可能性があるかもしれないけど、唐韻は俺と知り合って二日半だぞ。そんな短期間で好きになるわけないだろ?」
林逸は首を振った。そう考えるなら、お嬢様も毎日俺のことを目の敵にしているけど、それも好きってことになるのか?
「それもそうだな……」
康曉波は干笑いをしながら、林逸と一緒に学校へ向かった。
学校の門に近づいた時、康曉波は前方を指さして言った。「大將、見てよ、楚夢瑤と陳雨舒だ……」
「ああ……」
林逸は視界の端で楚夢瑤と陳雨舒のことを気にしていたので、驚きはしなかった。
「おや?大將、彼女たちが乗ってる車、さっきの君の車と同じみたいだぞ!」
康曉波の観察力は相当なものだった。
「そう?そんなに似てないと思うけど?」
林逸は誤魔化して「行こう、彼女たちのことは気にするな」と言った。
「そうだな、俺たちとは縁遠い存在だ。現実的じゃない」
康曉波は深いため息をついた。「あんな金持ちの高慢ちきな感じ、よく分かるよ……」