しかし林逸を安心させたのは、ロープが切れてから今まで、自分の身につけている玉の護符が一度も警告を発していないことだった。つまり、今は何の危険も存在していないということだ。
どうやら、李呲花の側近の達人たちもほとんど自分によって片付けられたようだ。あの二人の黃級の達人が死んだことで、李呲花はもはや何の達人も派遣できなくなった。麻ちゃんのような役立たずを送り込んで、幽霊のふりをして人を怖がらせたり、ロープを切るという低レベルな手法で自分や楚夢瑤を事故死に見せかけようとしていたのだ。
もちろん、そうであっても林逸は警戒を怠らなかった。李呲花の側に達人がいないとしても、それは一時的なことだ。なぜなら李呲花は言っていた、彼は一人ではなく、松山における代弁者に過ぎず、彼の背後には黒幕の存在があるのだと。
ついに、かすかに海岸線が見えてきた。しかし松山市からどれくらい離れているのかは分からなかった。林逸はGPS機器を持っていなかったので、太陽の方向から自分のおおよその位置を判断するしかなかった。
まさか水に入った後、こんなに遠くまで流されるとは思わなかった。林逸は苦笑した。陳雨舒が水を飲んでしまい、彼女の対応に追われていなければ、こんなに遠くまで海流に流されることもなかっただろう。
サメ……林逸は目を細めた。遠くない海面に、一匹のサメの背びれが素早く自分の方へ近づいてきていた。
林逸は眉をひそめた。一般的に、海のサメは積極的な攻撃や血の匂いに誘われない限り、人間を攻撃することはない。人間の肉は、サメにとってそれほど美味しいものではないからだ。
飢えに耐えられないか、血の匂いに刺激されない限り、サメは通常、人間の存在を無視する。もちろん、これは一般的な状況であり、例外もある。サメの中には特に凶暴なものもいて、浅瀬を行ったり来たりしながら、獲物を狙って攻撃する。
林逸は今、このサメが自分を攻撃するつもりがあるかどうかを判断できなかったが、それでも以前と同じ速さで岸に向かって泳ぎ続けた。もしこのサメがお腹いっぱいなら、自分を攻撃することはなく、自分の傍を泳ぎ去るだろう。
もし攻撃してくるつもりなら、林逸がここで待っていても意味がない。来るものは拒まず、一匹のサメなど林逸の目には入らなかった。
しかし、泳ぎながら、靴の中の短刀が再び林逸の手に握られていた。