第0291章 突発事件

「そんなことはない」林逸は拳を握りしめた。最後の任務だ。この任務さえ終われば、自分は自由になる。この街に留まり、愛する女の子と一緒に暮らすことができる。

唐韻もそれ以上は何も言わなかった。彼女はただ感じたままを口にしただけだ。芬ちゃんがあんなに可哀想な目に遭うのを見て、自分も同じ轍を踏みたくなかった。これが彼女が何度も林逸の気持ちを確かめる理由だった。彼女は確信する必要があった。なぜなら、彼女はもう抜け出せないほど深みにはまっていたから……

宋凌珊は悩んでいた。どうして刑事隊を引き継いだばかりなのに、こんなに不運が続くのだろうか?

まずは黒豹さんが逃げ出したが、幸い林逸が捕まえてくれた。少しは楽になれると思ったのに、今度は精神異常の殺人鬼が病院で治療を受けている最中に突然暴れ出し、見張りの刑事を負傷させて逃走してしまった!

この殺人鬼は入院した時点ですでに重傷を負っていた。もちろん、その傷は宋凌珊が与えたものだ。宋凌珊は自分がどれだけ手加減せずに攻撃したか分かっていた。彼女はこの男が本当に許せなかったのだ!

一家全員を殺害し、3歳の男の子さえも見逃さなかった。しかも殺害方法が極めて残酷で、洗濯機に入れて生きたまま回転させて殺したのだ!このような人間性を失った人間に対して、宋凌珊が手加減するはずがなかった!

逮捕の際、この男は抵抗したが、それは宋凌珊の思う壺だった。殴る蹴るの暴行を加え、この男を直接病院送りにしたのだ!この男が法廷に立っても死刑は免れないだろうが、そのまま死なせてしまうのは彼にとって楽すぎると思ったのだ!

だから宋凌珊は処分される危険を冒してでも、この男を病院に送った。幸い、この男があまりにも残忍だったため、公憤を買っており、世論は宋凌珊を非難するどころか、むしろこの殺人鬼を糾弾していた。楊懷軍も宋凌珊のために弁護の言葉を述べ、この件は過ぎ去った。

殺人鬼は病院で一週間寝ていた。本来なら彼の怪我は一ヶ月経っても治らないはずだったが、不思議なことに突然暴れ出し、見張りの刑事を負傷させて逃走し、消息を絶ってしまった。