第0296章 夜の約束

結果、車屋の店主は数日待っても黒豹さんが名義変更に来ないので、黒豹さんが残した携帯電話に電話をかけたが、電源が切れていた。

店主の話を聞いて、宋凌珊はもう説明する気にもならず、彼に直接市警察署に来てもらい、林逸と一緒に車管理所で名義変更をさせた。この車が盗品でない限り、宋凌珊は林逸がどこから手に入れたかなど気にしなくなった。

「よし、あなたの件は片付いたから、供述書を補足してくれる?」宋凌珊は供述書のノートを取り出し、林逸の供述を取ろうとした。

「供述書はいいよ、自分で作っておいてくれ。どうせ手柄は全部君のものだし、俺は少しも欲しくない」と林逸は言った。

「ダメよ」宋凌珊はきっぱりと拒否した。今回、林逸は大勢の目の前で黃冠崖を倒したのだから、その手柄をどうして自分のものにできるだろうか?他の人はなんと言うだろう?

「ちょっと電話するから」林逸は彼女を無視して、直接楊懷軍に電話をかけ、二言三言話した後、電話を宋凌珊に渡した。「聞いてみろよ」

宋凌珊は林逸から電話を受け取り、楊懷軍の声を聞いた。楊懷軍の命令に少し不満を感じながらも、唯々諾々と従った。「わかりました、楊局長!」

宋凌珊は眉をひそめながら電話を林逸に返した。この男は一体楊懷軍とどんな関係なのだろう?いつも公正無私だった楊懷軍が、林逸と関わるようになってから、宋凌珊の心の中での彼のイメージは崩れ去ってしまった。

「もういいわ、行っていいわよ」宋凌珊はさっぱりと言った。楊懷軍が今回の手柄は自分のものだと言うなら、そうすればいい。刑事隊の人間はみな楊懷軍の古い部下だから、楊懷軍が言えば、誰も反対意見を持つことはないだろう。

「ふん、次にまたこんな公私混同の態度を取るなら、俺に頼むなよ」林逸も少し怒った。自分が特別捜査官の真似事をしても金をもらえず、それなのにこんな態度か?

宋凌珊は林逸を一瞥したが、何も言わなかった。心の中では、「何様のつもり?自分が無敵だと思ってるの?次にあなたが解決できない問題が出てきたら、どうやって皮肉を言ってやるか見てなさい。今は我慢するけど」と思っていた。

林逸も宋凌珊に何かを表明させようとは思わなかった。彼にとって、宋凌珊が何を言おうと言うまいと、どうでもよかった。

警察署を出ると、林逸は太った男が警察署の門の前で右往左往しているのを見た。