萧塵と夏詩韻はニューエイジホテルを出て、車に乗らずに並んで歩きながら、夏家へと向かった。
「萧塵、秦家があなたに困ったことを起こすんじゃないかしら?」
夏詩韻は後々のことを心配しているようだった。
蘭寧市での秦家の勢力は夏家よりもはるかに強く、さらに重要なのは秦家の背後にある勢力が神秘的で並大抵のものではないということだ。
秦修傑が学業を放棄して軍に入ったことからも分かるように、秦家には少なくとも軍の背景があった。
この一点だけでも、慎重に対処せざるを得なかった。
「心配する必要はない。秦家にはそんな度胸はないさ」
萧塵は自信に満ちていた。
秦修傑の背後の力は、明らかにあの楓せんせいと美しい女性に関係していた。
先ほどの精神攻撃で、彼らに十分な威嚇を与えたはずだ。
彼らが馬鹿でない限り、また虐められに来ることはないだろう。
「うん!」
萧塵のその答えを聞いて、夏詩韻はただ頷くしかなかった。
彼女は萧塵が完全に変わったことを知っていた。自信に満ち、神秘的になり、以前とは別人のようだった。
何をするにも、まるで胸に確信があるかのようだった。
前回の苗青鳳との衝突も、おそらく自分が余計なことをしただけで、実際には萧塵は苗青鳳を全く恐れていなかったのだろう。
なぜか、夏詩韻の心には物悲しさがあった。
また交差点に着いた。
夏家と蕭家は異なる方向にあり、二人はいつもここで別れていた。
「さようなら」と言おうとした時、萧塵が先に口を開いた。
「今日は遅いから、家まで送っていくよ」
「えっ?」
夏詩韻は予想外だった。
萧塵が彼女を家まで送る?
「そんなに嫌そうな顔をする必要はないだろう?」萧塵は彼女を見つめて言った。
「違うの、違うの...ただ驚いただけ!」
夏詩韻は言いながら、心臓が不思議と早くなり、萧塵の目を直視できなかった。
「君さっきの行動も、僕を驚かせたよ」
「何が?」
「なんでもない、行こう」萧塵は笑いながら言った。
「うん」
夏詩韻は軽く頷き、両手を緊張して組み合わせた。
こうして二人はゆっくりと歩き、その間ほとんど言葉を交わさなかった。おそらくこの時は、沈黙が雄弁に語っていたのだろう。
半刻後、二人は夏家に到着した。
「着いたよ。じゃあ、帰るね」萧塵が言った。