第35章 あなたは酔っている

「ありがとう」林輕雪は微笑んで、ビールを受け取った。

普段はほとんどお酒を飲まない彼女だが、今日は何故か思い切り酔いたい気分だった。

ビールを受け取って一口飲んだ林輕雪は、すぐに眉をひそめた。「あぁ、苦い!」

葉錯は笑って言った。「酔えば、苦さは感じなくなるよ」

林輕雪は感慨深げに言った。「人生もそうなのかもしれないわね。自分を麻痺させて、酔っ払えば、苦しみも感じなくなる」

山下の灯りを見つめる彼女には、それが足元にあるように感じられた。遠くて近い。山風が優しく吹き、その世界が自分とは無関係のように思えた。数日来の憂鬱な気持ちから、ようやく解放される瞬間が訪れた。

葉錯は夜風に首を縮める彼女を見て、自分の上着を脱いで彼女に掛けながら言った。「そんなに消極的になることはないよ。人生には変化がたくさんある。確実だと思えることも、最後には変わることがある」