周りの人々が空を見上げていたため、葉錯が6、7階まで登っていることに気づいたのは後になってからだった。
瞬間的に群衆から驚きの声が上がった。「あああああ、あの人...」
一瞬のうちに、多くのスマートフォンが葉錯に向けられたが、皆は驚いたことに、この壁を登る人物が布で顔を覆っていることに気づいた。
葉錯が登っている壁は顏菲雨が立っている側ではなかったため、屋上に立ち続けている顏菲雨は下で何が起きているのか気づいていなかった。実際、葉錯が彼女の足元から登ってきたとしても、生気のない彼女の目は、この世界の誰にも向けられることはなかったかもしれない。
元々顏菲雨を心配していた群衆の注目は、一瞬にして葉錯に移った。皆はほとんど息をするのも忘れ、葉錯が一歩一歩上へと登っていくのを見つめていた。