その寮室は葉錯に蹴り開けられたが、中にいた数人は前の寮室の人々のように葉錯に怯えることはなく、寝転んだり座ったりしながら、まったく気にしない表情を浮かべていた。むしろ一人は足の指の間を掻いており、部屋中に酸っぱい臭いが漂っていた。
葉錯がこれほどの物音を立てたのだから、彼らが気付かないはずはないのに、誰一人として葉錯をまともに見ようともしなかった。
秦浩は入り口で、中に入る勇気もなく、首をすくめながら言った。「葉さん、もういいじゃないですか。中にいるベッドに座ってる奴はネズミくんって言って、すごく強いんです。あいつら手加減知らないし、僕たちじゃ太刀打ちできません。」
葉錯は笑みを浮かべた。「ただのネズミだろう。何が怖いんだ?」
葉錯は今日、雲海高校で最も恐れられるべき存在は他でもない自分だということを、全員に知らしめるつもりだった。
張天哲は葉錯が寮室に入っていくのを見て、内心喜びに満ちていた。
この寮室に住んでいるのは、東城府のチンピラたちだった。
東城府は白小樓が設立し、学校内のほとんどの不良やチンピラを吸収しており、約三百人いると言われていた。
彼らは裕福な家庭の後ろ盾を笠に着て、喧嘩の際は特に容赦がなく、以前ある生徒を植物人間にしてしまったことがあった。しかし加害者の生徒たちは、わずかな示談金を払っただけで、謝罪すらせず、警察署に立ち寄っただけで授業に戻ってきた。
この件以降、彼らはよく豪語していた。「金なら腐るほどあるんだ。もう何人植物人間にしたって構わねえよ。」
時として、世の中は非常に不公平だ。金持ちの子供は人を殺しても無事でいられるのに、貧乏人はパン一切れを盗んでも刑務所暮らしになる。葉錯はそのルールを変えようとは思わなかった。そんなことは彼の関心外だった。ただし、一度彼の逆鱗に触れれば、それは運が尽きたということだ。
寮室に入った葉錯は、左右を見回して言った。「まさにネズミの巣だな。本当に臭い。」
ネズミくんと呼ばれる男は、尖った口と猿のような顔つきで、顔中にニキビがあり、潰れた膿が一面に広がって、見るに堪えない様相だった。
ネズミくんは葉錯を見て、威圧的に言った。「お前、随分と度胸があるじゃないか。」