葉錯は思い出した。以前、唐墨秋のバーで確かに血殺組織の標識を見たことがあった。それは刃物でめちゃくちゃに切り刻まれていた。今考えると、それは唐墨秋が怒りを晴らすためだったのだろう。
血殺と戦うことなら、葉錯は手助けしてもいいと思った。なぜなら、前世の相棒である蝴蝶は、今頃血殺組織の中にいるはずだから。葉錯はずっと前から、必ず彼女を救い出すと誓っていた。
唐墨秋は葉錯の表情を観察し、彼が少し心を動かされたようだと感じると、急いで言った。「もしあなたが協力してくれるなら、あなたが必要とするものすべてと、私が手に入れたすべての情報を提供します。私の方にも他の協力者がいて、彼らがあなたを助けてくれるでしょう」
葉錯は微笑んだ。「血殺はそう簡単に対処できるものじゃないよ」
唐墨秋の口元に微笑みが浮かんだ。彼女はついに確信できた。葉錯こそが英雄令主だと。なぜなら、普通の人間は血殺の存在など知るはずがないからだ。
「私はすでに血殺の華夏支部を見つけました。血殺組織全体と戦う必要はありません。ただ血殺の支部を破壊するのを手伝ってくれればいいのです」と唐墨秋は言った。
葉錯は眉を上げた。彼は前世でじじいから武術を学び、海外に行って初めて血殺組織に加入したので、華夏の血殺支部についてはあまり詳しくなかった。今、唐墨秋が血殺に関する情報と所在地を提供してくれるというのは、葉錯にとっても非常に重要な助けになる。
しかし葉錯はまだ承諾せず、微笑みながら言った。「考えておくよ。もし協力する気になったら、返事するから」
唐墨秋はこういった事は強制できないことを知っていた。また、以前の英雄令主たちはみな妖魔級の人物で、年齢もかなり高かった。今、こんなに若い英雄令主が現れたことで、彼女も葉錯の素性がわからず、多くを語ることができなかった。「わかりました。私は前のバーであなたの連絡を待っています。早く来てくれることを願っています」
葉錯は何も答えず、立ち上がって出て行った。
林輕雪は白い衣装をまとい、夜の中で絵に描いたような仙人のように美しかった。葉錯はふらふらと彼女の側に歩み寄った。
林輕雪は微笑んだが、目の周りが少し赤くなっていた。
葉錯は笑いながら言った。「どうして泣いてるの?」
「さっき両親が私に会いに来たの」
「へえ、何を話したの?」