「藥王經?」誰がそんな大口を叩いて、自分を薬王と称するほど大胆なのか?
葉錯はこの時、蘇家の人々全員が、あの本を見て顔色を変えたことに気づいた。明らかに蘇老爺様がこのような貴重なものを取り出すとは思っていなかったようだ。
「おじいさま、こんな貴重なものをどうして彼にあげられるのですか?これは私たち蘇家の家宝だとおっしゃっていたではありませんか?」蘇小蠻が傍らで驚いて言った。
「このものは、葉くんの手の中でこそ最大の価値を発揮できる。それならば、彼に贈って何が悪いのか?」蘇老爺様は淡々と言った。
葉錯は蘇小蠻の言葉を聞いて眉をひそめ、心の中で思った:どんな本がそんなに貴重なのだろう?蘇家のような大きな家業を持つ家が、一冊の本を家宝としているとは?
彼は手を伸ばしてその本を受け取り、何ページかをめくってみると、すぐに精神が引き締まった。
「ご老公、これは...こんな貴重なものを、本当に私にくださるのですか?」葉錯は自分の手が少し震えているのを感じた。
ただ何気なくめくっただけだったが、葉錯は前世の見識から、この藥王經が間違いなくその名に恥じないものだと即座に理解した。
人々が古武道を修行する際、基本的には体を鍛え、自分の肉体をより高い強度に達せさせることだ。
修行の過程では、消耗量が非常に大きい。
この身体へのダメージは、食事や睡眠などの休息では補いきれないものだ。
そのため、古武道修行者はみな、様々な薬物を選び、服用したり、薬液で自分の体を浸したりして、修練中の肉体の損耗を補い、同時に肉体の強度を高める。
葉錯は前世でも多くの薬方を持っていたが、それらはすべて初級のものであり、中には彼に適していないものもあった。この『藥王經』を何気なくめくってみると、その中にいくつかの薬方があり、まさに自分にとって非常に有用なものだと発見した。
この『藥王經』は、まさに古武道修行者にとっての至宝だ。
蘇老爺様は葉錯を見てにこにこ笑いながら言った:「お前の役に立つなら良かった。私が無駄に持ち出したわけではなかったということだ。これは我が家が持っていても使い道がない。お前が我が家にしてくれた恩に対する謝礼と思ってくれ。」