第29章 試探

方晴は一瞬の驚きの後、突然動画の中の人物が確かに蘇乘羽の髪型や後ろ姿とそっくりだったことを思い出した。だから見覚えがあると感じていたのに、誰なのか思い出せなかったのだ。

許南枝は黙って笑っていたが、方晴はまだ信じられない様子で言った。「でも、どうしてそんなことが?数日前に会ったばかりなのに、ただの普通の人で、しかも3年も刑務所に入っていたのに、どうやって石破金を倒せたというの?もしそんな実力があったなら、姜家から追い出されて、あんな屈辱を受けることもなかったはずよ」

「実力を隠していたのかもしれないし、屈辱を受けた後で奮起したのかもしれない」と許南枝は言った。

「それはありえない!練武は一朝一夕にできるものじゃないわ。たった数日で、無力な普通人から三品大師を倒せる強者になれるはずがない!」

方晴自身が練武の人であり、練武には近道がないことをよく知っていた。彼女は10歳から練武を始め、名師の指導を受けても、15年かけてようやく內勁を得られたのだ。

武学の天才でさえ、3、4日で內勁を得ることなどできないはずだった。

「あなたがどれほど信じられないと思っても、事実は目の前にあるわ。石破金は蘇乘羽の手にかかって死んだのよ」

許南枝も心の中では、蘇乘羽がどうやってそれを成し遂げたのか非常に興味があった。

「南枝姉さんの言うことはもっともです。でも、もっと分からないのは、彼が犯人だと知っているのに、なぜわざわざ私に教えに来たのですか?本来なら彼の嫌疑を晴らすべきではないですか」

方晴は許南枝が蘇乘羽のために林初雪と対立するのを目の当たりにしていた。許南枝の今の行動は、彼女を困惑させた。

「この件を押さえてほしいの」許南枝は率直に言った。

「それは無理です!」

方晴は躊躇なく拒否した。

「南枝姉さん、私を困らせないでください。三品大師が死んだんです。この件を押さえることなんてできません。必ず龍魂司に報告しなければなりません」と方晴は説明した。

「通常通り龍魂司に報告すればいい。あなたが龍魂司に入りたがっているのは知っているし、これはあなたにとって功を立てるチャンスでもある。だから最速で事件を解決する手助けをしたいの。私が望むのは、この事件を他人に任せないで、犯人に関する手がかりを他人に漏らさないことよ」