灰熊はこの時、心の中で辛かった。彼は蘇乘羽に会ったことがあった。
前回、東陵大飯店で、灰熊は中で食事をしていた。ちょうど窓際の席で、徐陵山が蘇乘羽の前に跪いているのを目撃した。そばには周朝明もいて、同じく蘇乘羽に対して恭しく接していた。
この二人は、灰熊にとっては大物だった。
特に徐陵山は、元々江湖の出身で、今は足を洗っているとはいえ、依然として江湖での地位は高く、灰熊は徐陵山の前では、まだまだ若輩者だった。
徐陵山のような身分と地位の人物が蘇乘羽の前に跪くのを見て、灰熊は蘇乘羽を知らなくても、考えるまでもなく、蘇乘羽が大物であり、しかも徐陵山と周朝明を圧倒するような大物だということは分かった。
このような大物に、百の度胸があっても手を出す勇気はない。灰熊はまだ長生きしたかったのだ。