ロビーで、林正勳は満足げな表情を浮かべていた。このまま進展すれば、蘇乘羽が林家の婿になることは間違いないだろう。
「父上、初雪の婚約の件は、どう処理しましょうか?」林致遠が尋ねた。
「その件は、私から袁震東と直接話をする。初雪もずっとこの婚約に反対していたのだから、この機会に解消してしまおう。」
袁震東と林正勳は義兄弟の契りを交わした仲で、かつて二人は共に奮闘して正東グループを設立した。しかし、その後正東グループの発展が順調ではなくなり、袁震東は株式の一部を手放し、現在袁家は正東グループの二十五パーセントの株式を保有している。
袁家は依然として正東グループの第二大株主だが、実質的な支配権は林家にある。
林初雪と袁震東の長孫である袁超羣は幼い頃からの許嫁で、とっくに結婚しているはずだったが、林初雪が強く反対し続けたため、今日まで延期されていた。
「もう一つ重要な件だが、今回我が家を陥れようとした者は誰なのか。この事は調査が難しいな。」
陰で如此残忍で恐ろしい敵がいることに、林致遠は非常に心配していた。
「あまり心配する必要はない。蘇さんが林家にいる限り、林家は安泰だ。」林正勳は賢明に言った。
「袁家の仕業である可能性はないでしょうか?我が家が混乱すれば、最大の受益者は間違いなく袁家です。」林致遠は分析した。
林正勳は手を振って言った。「ありえない。私は袁震東という人間をよく知っている。慎重で度胸がない男だ。そんな度胸があれば、今頃正東グループの半分は袁家のものになっていただろう。」
「袁震東は体調が悪く、長くは生きられまい。そして彼の家系は一本道で、子や孫は平凡で才能がない。私が昔の情を汲んで二十五パーセントの株式を持たせていなければ、彼らが今のような快適な暮らしができるはずがない。」
父子が話をしている間に、蘇乘羽も階段を降りてきた。
「蘇さん、娘の具合はいかがですか?」林致遠は急いで尋ねた。
「問題ありません。」
蘇乘羽は書き上げた処方箋を林幻風に渡し、すぐに林致遠に言った。「あなたの家の問題は解決しました。私の報酬について、支払いの用意はできていますか?」
蘇乘羽は林初雪の面子を立てて林家を助けたが、受け取るべき報酬は一銭も減らすつもりはなかった。