「痛くないよ。私たちも急いで行きましょう。もし石剣鋒がまた襲ってきたら、私は防ぎきれないから」
方晴は蘇乘羽を支えて彼女の車に乗せ、龍魂司部を離れた。
「家には送らないでくれ。石剣鋒がまた陰謀を仕掛けてくるかもしれないから心配だ。とりあえずどこかホテルに泊まらせてくれ」
蘇乘羽は怪我が回復しない限り、石剣鋒と対峙すれば間違いなく死ぬだろう。全盛期なら、勝てなくても逃げることはできただろうが。
「ホテルも安全じゃないわ。龍魂司にすぐ見つかってしまうわ。もし良ければ、私の家に泊まりなさい」と方晴は言った。
「わかった」蘇乘羽はうなずいた。
方晴は車を市内に戻し、彼女の家は刑事課からそう遠くない、かなり高級な住宅街にあった。
「結構お金持ちなんだね。こんな住宅街の家を買えるなんて。いろいろと良い思いをしてるんじゃないの?」蘇乘羽は冗談めかして言った。
「私はそんな人間じゃないわ。この家は姉が出してくれたの。そうでなければ私の給料じゃ、とても買えないわ」
蘇乘羽は方晴に冗談を言っただけだった。彼は方晴がお嬢様気質でプライドが高いところはあるものの、骨の髄まで正義感にあふれた人間だということを知っていた。そうでなければ、方家の背景を考えれば、彼女は今頃単なる刑事課長どころか、龍魂司にも入っていただろう。
方晴は蘇乘羽の前で、ロックの暗証番号を入力した。蘇乘羽は笑って言った。「暗証番号を入れるのに、私に背を向けないの?ある夜、私が寝ている間に、こっそり自分でドアを開けて忍び込んでくるかもしれないのに?」
「そんなことしたら承知しないわよ!暗証番号は覚えておいて、私が家にいない時に、あなたが出かけるのに便利でしょ」
ドアを開けて中に入ると、方晴の家はそれほど高級な内装ではなく、2LDKの部屋は非常にシンプルに整えられ、家具も普通でシンプルだった。家の中には淡いジャスミンの香りが漂い、リビングには練功用の器具がいくつか置かれていた。
「まずはリビングで座っていて。部屋を片付けて、ベッドを用意するから。それから服も何着か買ってくるわ」
蘇乘羽の体には縦横に恐ろしい傷跡が走っており、方晴はそれを見るだけで心が痛んだ。
「いらないよ。服は持ってきてる。まずはシャワーを浴びたい」と蘇乘羽は言った。
「服を持ってきたの?どこに?」方晴は不思議そうに尋ねた。