第075章：新職業！
「向こうにポルシェがあるけど、いい感じだね。好きなのを選んでプレゼントするよ」と林逸が言った。
「いらないわ」と紀傾顏は言った。「私のマセラティで十分よ。それに、車が必要な時はあなたに電話すればいいし、そんなに車を買っても意味ないわ」
「そうだね、配車サービスはいつでも呼べるし」
「でも、あなたがこんなに車を買うのって、ちょっと無駄じゃない？」と紀傾顏は小声で言った。
「稼いだお金は使うためにあるんだよ」と林逸は言った。「もし死んでお金が余ってたら、それこそ勿体ないだろう」
「あなたってば、いつもそうやって理屈をこねるのね」と紀傾顏は笑いながら言った。「行きましょう、何か食べに行きましょう。お腹空いたわ」
「そうだね、僕もお腹が空いてきた」
モーターショーを出ると、ブガッティのスタッフが指定された引き渡し場所に車を停めていた。
これも林逸の手配で、羊城にいる間は車がないと不便なので、このブガッティを先に受け取ることにした。残りの車は全て中海に送ることになっていた。
食事を済ませた後、二人はしばらく街を散策してから帰った。
その日の午後、林逸が孤児院のために買った車を見て。
王翠萍と趙全福は本当に驚いた。
車のことは置いておいても、800万以上もするガソリンカードだけでも、彼らにとっては消化するのに時間がかかりそうだった。
夜遅く、林逸と紀傾顏はホテルに戻った。
「明日、予定ある？」部屋の中で紀傾顏が尋ねた。
「何かあるの？」
「明日、羊城支社を見に行こうと思ってるの。暇だったら、一緒に来ない？」
朝陽グループの事業展開について、林逸も少しは知っていた。
中海での事業以外にも、他の省や市にも多くの不動産物件があり、彼女が視察に来るのは当然のことだった。
「でも、あまり問題は見つからないと思うよ」と林逸は言った。
「社長が来ると分かっていれば、下の者たちは仕事をきちんとやっているはずだし、わざわざ調べられるのを待つわけないでしょう？」
「大丈夫よ。今回は幹部には誰にも言ってないの。抜き打ち検査よ。問題がなければいいけど、もし不適切なことがあれば、絶対に見逃すわけにはいかないわ」
林逸は笑って何も言わなかった。
紀傾顏はこの人たちのことを単純に考えすぎていた。
もし初日に羊城事業部を抜き打ち検査していれば、効果はきっとあったはずだ。
しかし、もう二日も経っているので、この情報が漏れている可能性は十分にある。
問題が見つかるかどうかは、運次第だろう。
「じゃあ、決まりね。明日一緒に行ってみましょう」
「ちょうど車もあるし、送っていけるよ」と紀傾顏は言った。「でも今からシャワーを浴びるつもりなんだけど、林さんはまだここにいるつもり？」
「どういう意味？バスルームで待っていろってこと？背中を流してほしい？」
「何を流すのよ、早く自分の部屋に戻りなさい」
林逸は笑いながら立ち上がった。「背中を流してほしくなったら声をかけてね」
「変態」
そう言って、紀傾顏は林逸を部屋から追い出した。
ベッドに横たわった林逸は、なかなか眠れなかった。
明日は月曜日で、システムが新しい職業をランダムに開放する。
どんな新職業が自分を待っているのか分からない。
深夜12時、システムの通知音が林逸の脳内で鳴り響いた。
【新職業開放（はい/いいえ）】
【体験職業：大學教師】
【職業達成度：0%】
【ホストは職業特典パックを受け取ってください。1000万人民元、全能力上昇ポーション、賢者の知恵】
うわっ！
林逸は心の中で驚いた。新職業が大學教師だなんて？！
これはちょっとスリリングだな。
システムが提供した職業特典パックを見て、林逸は深く考え込んだ。
1000万の現金については、特に言うことはない。
最初に配車サービス運転手を体験した時も、同じ金額をもらった。
システムの設定によると、今後新しい職業を開放するたびに、この金額が支給される。これは固定報酬で、多くも少なくもない。
多くはないが、蚊の脚でも肉だ。文句を言う理由はない。
全能力上昇ポーションについても、林逸は何なのか知っていた。ネット小説でも詳しく説明されている。
しかし賢者の知恵については、林逸は困惑した。
「システム、この賢者の知恵って何？」
【賢者の知恵には、世界中の全てのトップ学者の知恵が含まれており、ホストが大學教師という職業に完璧に適応できるよう支援します】
システムの説明を聞いて、林逸はおおよその意味を理解した。
つまり、他人の知識を自分の頭の中に入れるということだ。
大学は非常に専門的な場所だし、知識がなければ、どうやっても軽蔑されるだろう。
林逸はもう一度システム画面を確認すると、新職業の欄に（はい/いいえ）の文字があることに気付いた。
おそらく開放するかどうかを尋ねているのだろう。つまり、選択権は自分にある。
「システム、今の配車サービス運転手の職業の達成度は85%だけど、新職業を開放したら、残りの報酬はもらえなくなるの？」
【ホストが新職業を開放すると、旧職業は自動的にクールダウン状態になります。クールダウン期間は1週間で、クールダウン完了後に再開可能です】
林逸は考えた。「二つの職業を同時に進められるの？」
【二つの職業を同時に進めることはできません。旧職業を開放すると、新職業は自動的にクールダウンに入り、1週間後にホストは再開放を選択できます】
システムの詳細な説明を聞いて、林逸は全ての疑問を理解した。
しかし、配車サービス運転手の職業はすでに85%達成しており、最後の究極の報酬にはまだ魅力がある。
システムのタスク配布の習慣から考えると、残りの15%の達成度は、おそらくもう一つのタスクで完了できるだろう。
だから新職業の開放は急がない。もし以前のように簡単なら、新職業の開放を延期する。
もし比較的難しければ、その時に新職業を開放しても遅くない。
今後のことを整理した後、林逸は伸びをして、まずは寝ることにした。
翌朝、林逸が着替えを済ませて紀傾顏の部屋に来ると、彼女はすでに身支度を整えていた。
「ちょっと待っててね、服を着替えて化粧するから」
「いいよ、どうぞ」
林逸はスイートルームのソファに横たわり、ゲームをして時間を潰した。
'百褶裙さん'という名前のゲーマーが、また自分にプライベートメッセージを送ってきたことに気付いた。
ここ数日で、少なくとも20通は送ってきている。
この人は本当に諦めが悪い。
'百褶裙さん'の戦績を見てみると、負けが多く勝ちが少なく、勝率は20%程度で、超絶キャリーできるプロと当たらない限り、ほとんど負けている。
「この人、頭悪いの？低ランク戦でこんな成績なんて」
相手があまりにも可哀想なので、林逸は一緒に1試合プレイした。
百褶裙さん：「プロの方、ありがとうございます。やっと1勝できました」
見えない手羽先さん：「勝つの大変だったね。この知能じゃ、ゲームは諦めた方がいいよ」
「林逸」と紀傾顏の声が聞こえた。
「どうした？」
「ファスナーを上げるの手伝って。引っかかってるみたい」