放課後、林亦は鞄を片付けていた。
馮勇たちは面倒を起こしに来なかったので、それだけでも助かった。
鞄を片付け終わり、林亦が教室を出ると、階段の角で待っていた鍾水雨と出くわした。
鍾水雨は林亦を見つけると手を振った。「逃げられると思って、わざとここで待っていたの。さあ、今夜は私の家に来て、補習をしましょう」
鍾水雨の出現に、林亦の後ろにいた七組の生徒たちはくすくすと笑い出した。
「この林亦はまた宿題をやってなくて、生物の先生に捕まったんだな」と、ある男子生徒が軽蔑した表情で言った。
「なんで学校に来てるんだろう。落ちこぼれのくせに、生意気なんだよね」後ろにいた同級生の女子たちも、他人の不幸を喜ぶような表情を浮かべた。
陳萌が群衆の中から出てきて、鍾水雨に止められた林亦を見つめ、眉をひそめた。
林亦も偶然彼女を見かけたが、陳萌は何の反応も示さず、鞄を背負ったまま立ち去った。
「かなり孤立されているみたいね?」
鍾水雨の隣を歩きながら、周りの生徒が少なくなってから、鍾水雨は首を傾げて林亦を見つめ、静かに尋ねた。
それまで鍾水雨は、林亦は成績が悪く、少し無口な生徒だと思っていただけで、クラスでの人間関係までは気にしていなかった。
先ほどの生徒たちの言葉も、鍾水雨の耳に入っていた。
「まあまあかな」
林亦の何でもないような態度を見て、鍾水雨の心には母性的な思いやりが芽生えた。
「きっと林亦は認めたくないだけで、心の中では寂しい思いをしているのかもしれない。ただ男の子だから、他人に弱みを見せたくないだけなんだわ」
鍾水雨はそう考えながら、林亦を見る目がより優しくなった。
「これからもし何か困ったことがあったら、私に相談してね。私もあなたより数歳上なだけだから、友達として接してくれていいのよ」
鍾水雨の言葉を聞いて、林亦は彼女が何かを誤解しているのを悟ったが、説明する気にもならなかった。
鍾水雨の住まいは明海第二中學校からそれほど遠くなく、歩いて10分ほどの場所にあった。団地は静かな環境だったが、少し古びて見えた。
鍾水雨の後について6階建ての建物の前に着くと、階段を上っていった。
鍾水雨は6階に住んでいた。ドアを開けると、部屋の中には微かな香りが漂っていた。