226.ぶっ殺してやる

しかし、この重要な時期に特許を盗むというスキャンダルが発生し、上場に確実に影響を及ぼすだろう。

彼女は藤堂澄人と対等な立場になって九条初の親権を取り戻すことに必死だったが、今は……

夏川雫は眉をひそめ、藤堂澄人を皮肉めいた目で見つめた。「藤堂社長は今、さぞ喜んでいることでしょうね?結衣が大きな問題に巻き込まれて、これからはあなたと初の親権を争うのも難しくなるでしょう」

藤堂澄人は誠和の件を九条結衣に隠せないことを知っていたので、最初から隠すつもりはなかった。今回のトラブルは小さくはないが、大きな問題でもない。彼が手を貸して解決するのは難しいことではなかった。

しかし、彼を悩ませたのは、夏川雫が今言ったことが、おそらく九条結衣の本心だということだった。

彼の心には、自分で自分の首を絞めてしまったような後悔の念が湧き上がった。