246.鏡を見たことがあるのか

「うん」

九条結衣は短く返事をして視線を戻し、それ以上何も言わなかった。小林由香里は彼女が信じたかどうか分からなかったが、その後の普段通りの表情を見て、ようやく安心した。

藤堂澄人も二階から降りてきた。小林由香里は食器を並べ終わると、熱心に藤堂澄人の前に歩み寄り、「藤堂さん、夕食の用意ができましたよ。どうぞ召し上がってください」と声をかけた。

小林由香里の言葉に込められた期待と熱意は、誰が聞いても分かるものだった。先ほどの小林由香里の自分に対する反応を思い出し、九条結衣はすぐに理解した。

スープを飲みながら、小林由香里の方をじっと見つめ、心の中で彼女のために溜息をついた。

まだ若すぎるのだ。前回忠告したときも、明らかに聞く耳を持たなかった。今度忠告しても、きっと自分の出世の邪魔をしていると思うだろう。