高橋夕は藤堂澄人をちょうど見かけたかのように、顔に適度な驚きの色を浮かべ、急いで挨拶をした。そして、さりげなく九条結衣を一瞥し、下唇を噛みながら、委屈そうに脇へ退いた。
今度は「澄人兄さん」と呼ばないの?だからその呼び方は彼女を刺激するためだけに存在したの?
九条結衣は高橋夕を見て、眉をひそめた。
藤堂澄人は彼女を無視し、高橋夕に目もくれず、ただ腕の中の「横暴な」女性を見下ろしながら、低い声で言った:
「ちょっと釣りに行っただけなのに、もう事を起こしたのか?」
元々は妻のために大きな魚を何匹か釣って全魚料理を作ろうと思っていたのだが、座ってまもなく、あの白い顔の男が自分の妻に何かを話しかけているのを見た。
距離があったため、二人が何を話していたのかはわからなかったが、あの白い顔の男の言動は一応礼儀正しかったので、放っておいた。