767.死の気配が迫る

このように黙り込んでいる九条結衣に、藤堂澄人は心の中で不安と後ろめたさを感じながら、結衣の手を取ろうとして、「結衣...」

言葉を発した途端、結衣にすぐさま振り払われてしまった。

そして、救急箱から消炎薬と水を取り出し、彼の傍らに置くと、ゴミ袋を手に取り、書斎に横たわる藤堂澄人を置き去りにして、一言も発せずに出て行った。

藤堂澄人:「……」

たった30分前、彼は結衣に対して同じような態度を取っていたのに、こんなにも早く自分に跳ね返ってきてしまった。

この状況で、澄人が妻の言うことを聞かずに更に怒らせるなんてことはできるはずもない。

妻が怒り出したら、その結果は非常に深刻なものとなるのだから。

彼は結衣が目の前に置いていった消炎薬を迷わず手に取り、ぬるま湯で一気に飲み込むと、書斎を出て服を着替え、結衣が部屋にいないのを確認すると、急いで外に出て「許しを請う」時間を作った。