そのため、とても熱心に挨拶を交わしていた。
女性陣の方では、当然挨拶を交わす人もいたが、高橋夕は、高橋洵と黒崎芳美が離れた後も、ずっと高橋健二の側に立ったままだった。
高橋健二はこの従妹とはあまり接点がなく、彼女に対する印象もあまり良くなかった。
ネット上でキャラを作ってファンを騙すことはまだしも、しょっちゅう他人の夫を誘惑しようとする行為は非常に不適切だった。
特に、彼女が誘惑しようとする相手は、彼女の夫の家の従妹の夫だった。
高橋健二は元々高橋夕というこの従妹と共通の話題もなく、その上この人物に対する印象が悪かったので、なおさら自分の側にいて欲しくなかった。
さらに高橋夕は今この瞬間、彼女の側に立っているものの、彼女と話をしようとするわけでもなく、ただ視線をある一点に固定したまま、目に隠しきれない恋心を滲ませ、まるで目からあふれ出そうとしていた。
高橋健二は悟られないように眉をひそめ、彼女の視線の先を追うと、案の定、彼女から遠くない場所にある、数日前に特別に設置させた子供の遊び場に視線が注がれており、そこでは藤堂澄人が息子と一緒に遊んでいた。
静かに視線を戻し、高橋夕に話しかけようとした時、彼女はすでに我慢できずに藤堂澄人の方向へ向かっていった。
高橋健二の眉間のしわは更に深くなり、追いかけようとした時、傍に立っていた小林翔に止められた。
「心配いらないよ、藤堂澄人が自分で対処するさ。」
先ほど、彼も自分の妻のこの本家の従妹が、藤堂澄人を飲み込みたいかのような視線で見つめているのを目にしていた。
ふん!野心が随分大きいものだ、藤堂澄人のような人物に目をつけるとは。
「でも彼女が……」
高橋健二の顔には、怒りの色が浮かんでいた。
今日は老人の誕生日なのに、この厚かましい従妹が恥ずかしい真似をしないことを願うばかりだ。
小林翔は安心させるように自分の肩を叩き、藤堂澄人の方を見やって言った:
「もし藤堂澄人が、積極的に近づいて明らかに誘惑しようとする女性一人も対処できないなら、結衣の純粋な愛情も無駄になってしまうよ。」
高橋健二は自分の夫がそこまで言うのを聞いて、追いかけることを諦めた。
ただ、藤堂澄人に近づこうと急ぐ高橋夕の後ろ姿を見ながら、眉間のしわは更に深くなっていった。
「藤堂社長。」