山田花江は藤堂澄人の顔を見つめ、一瞬固まり、しばらく言葉を発しなかった。
「山田叔母さん、私は先に戻ります。九条結衣が私の帰国を待っています。今は藤堂グループが彼女の手に委ねられているので、心配で。」
「そう、気を付けて帰るのよ。何か分からないことがあったら、いつでも山田叔母さんに相談してね。」
「はい、山田叔母さん、お体を大切に。」
藤堂澄人は山田花江の病室のドアを開けて出て行った。
藤堂澄人の後ろ姿を見つめながら、山田花江の表情には、何とも言えない深い意味が浮かんでいた。
山田花江の病室を出た後、藤堂澄人の顔に九条結衣の名を口にした時に浮かんだ鋭い表情は消え、細められた瞳には、誰にも読み取れない深い思いが宿っていた。
藤堂家のプライベートジェットは、アメリカの藤堂ビル裏の離着陸場に停まっていた。