「えっ?」
九条結衣は携帯から顔を上げ、九条愛の心配そうな表情を見つめた。「うん?何でもないよ」
九条愛は綺麗な赤い唇を噛んで、慎重に言葉を選んで話し始めた:
「藤堂澄人のことで頭がおかしくなったんじゃないの?」
九条結衣は携帯を持つ手を一瞬止め、その後、笑いながら首を振った。
「怒ることなんてないわ。ただの男でしょう。結婚した三年間、私に冷たくしていたことに比べれば、今回こんな風に堂々と女遊びをするなんて、むしろ私に対して礼儀正しいんじゃない」
礼儀正しい……
九条愛は呆れたように九条結衣を見つめた。
よくも「礼儀正しい」なんて言葉が出てくるものだ。
やっぱり!この姪っ子は怒りで頭がおかしくなってしまったに違いない。
彼女は九条結衣に何も言わず、立ち上がって去っていった。