1005.

彼はこっそりとその子供の写真を見ていた。まるで自分と同じ型から刻み出されたような顔だった。

あんなに賢くて可愛い子供を、写真を見ているだけで、彼は抱きしめたい衝動を抑えられなかった。もし実際に会ったら……

藤堂澄人は考えるのも恐ろしかった。彼は自分の記憶を妨害したその人物を憎んでいた。

もし……もし彼が九条結衣を無条件に信じて、あの奇妙な感情を必死に抑え込まなければ、自分が子供に何をしていたか、考えるのも恐ろしかった。

同時に、彼はもう一つのことに気づいていた。

この子供に関することに触れなければ、あの衝動は現れないということだ。

例えば子供のことを話題にしなければ、子供を見なければ、あの衝動は現れなかった。

「結衣、俺は……」

彼は唇を噛み、何を言えばいいのか分からなかった。多くの言葉が、口に出せなかった。あるいは、言う勇気がなかった。

九条結衣は彼の腕の中から顔を上げ、安心させるような眼差しを向け、笑いながら言った。

「大丈夫よ、わかってる。ただ、あなたの息子があなたに会いたがっていることを伝えたかっただけ。」

彼女は彼の腰をしっかりと抱きしめ、励ますかのように言った。

「私たちは頑張らなきゃ。子供のためにも、私たちの未来のためにも、黒幕を見つけ出さなきゃ。」

彼女は決意に満ちた目で藤堂澄人を見つめ、続けた。

「あなたの記憶は脳の損傷によるものではなく、誰かが何らかの方法で強制的に干渉したものよ。だから、黒幕さえ見つければ、あなたの記憶も戻るかもしれない。」

「わかってる、ただ……」

藤堂澄人は九条結衣を見つめ、ため息をつくと、彼女をさらに強く抱きしめた。

「君たちに辛い思いをさせてしまって。」

九条結衣はその言葉に笑みを浮かべた。「あなたがずっと私を信じてくれているだけで、辛くなんかないわ。」

彼女は彼の腕から身を引き、壁の時計を見て言った。

「もう遅いわ。早く帰って、誰にも見つからないようにして。」

妻に追い出されると聞いて、藤堂澄人の暗かった表情がさらに沈んだ。

「久しぶりに会ったのに、一晩ここで寝ていくことはできないの?」

低い声での不満は、まるで深窓の寂しい怨婦のようだった。

「ダメ!」

九条結衣は一切の同情なく断固として拒否した。