木村靖子は藤堂澄人の支援のもと、正式に芸能界に足を踏み入れ始めた。
第三者という汚名を着せられ、ずっと非難されていたが、彼女はまったく気にしていなかった。
たとえ第三者だとしても、それは藤堂澄人の第三者であり、普通の第三者とは本質的に違いがあるのだ。
それに、今は第三者と呼ばれていても、永遠に第三者というわけではない。藤堂澄人が九条結衣と離婚して彼女と結婚すれば、彼女は正当な藤堂奥様になるのだ。
そのときには、慈善活動をして、ステマを使って自分のイメージを洗浄すれば、誰も彼女の過去の醜聞を覚えていないだろう。
皆が覚えているのは、彼女が運が良く、藤堂澄人という夫がいるということだけだ。
木村靖子はずっとこのような「信念」を持って、鼻高々と芸能界に足を踏み入れていた。
田舎娘から女優へと成り上がったという設定が崩れてから、高橋夕は最近、芸能界での道のりが少し厳しくなっていた。
彼女の背後には高橋洵という父親がいるとはいえ、やはり世間の評判が悪くなり、最近出演した数本の映画の反応もあまり良くなかった。
以前は黒崎芳美という継母が彼女にお金を出して道を開いてくれていたので、リソースの問題は心配していなかった。
しかし、藤堂澄人に問題が起き、藤堂グループが危機に陥ってから、黒崎芳美は藤堂グループの株価が暴落することを心配していた。
さらに、九条結衣との口論があったことで、黒崎芳美は怒りのあまり、手持ちの株式をすべて田中真斗に売却してしまった。
本来なら、藤堂グループがあれば、彼女はその10%の株式で一生の出費を心配する必要はなかった。
しかし、それらの株式を田中真斗に売却した後、彼女は数百億の資金を持っていたが、それでもその数百億は田中真斗に値切られた金額だった。
今、黒崎芳美は藤堂グループの株式を失い、絶え間ない配当金もなくなり、いわば蓄えを食いつぶしている状態だった。
黒崎芳美は当然、高橋夕にお金を使い続けることを惜しんだ。
藤堂澄人に問題が起きる前の彼女の株式は、数千億の価値があったのだ。
だから、彼女は高橋洵父娘の機嫌を取るために、高橋夕の道を開くためのお金を使うことを惜しまず、いつも大盤振る舞いだった。
黒崎芳美というリソースがあったため、高橋夕は自分の芸能界での道のりが順調でないことを少しも心配していなかった。