1037.伝説の妖精の戦い

オーディションの大作映画のヒロインはすべて彼女に内定していた。業界では、誰もが彼女と藤堂澄人の関係を知っており、裏では多くの人が彼女に取り入るために靖子姉さんと呼んでいた。

今、澄人は彼女が爺さんのことを心配しすぎないように、わざわざ国際的に有名な脳科学の権威を呼んで爺さんの診察をさせていた。

これは彼女の本意ではなかったが、藤堂澄人が彼女をどれだけ重視しているかの証でもあった。

病院の建物から無表情で出てくる藤堂澄人と、彼の側に意図的に近づこうとする遠藤晶を見て、木村靖子は瞬時に外の妖怪が自分の三蔵法師を誘惑しようとしているような感覚に襲われた。

前に出て遠藤晶を藤堂澄人の側から押しのけると、彼女は遠藤晶を睨みつけ、目には警告の色が浮かんでいた。

遠藤晶も彼女を恐れず、真っ直ぐ睨み返し、木村靖子は瞬時に血の気が上った。

最近藤堂澄人に「寵愛」されていることを盾に、木村靖子はまったく恐れを感じず、九条結衣がいる場でさえ挑発することを忘れず、前に出て遠藤晶の頬を平手打ちした。

「恥知らずの安い女、私を睨むなんて!」

遠藤晶も木村靖子が手を出してくるとは思っておらず、最初は呆然としたが、次の瞬間、怒りで頭に血が上り、反撃して木村靖子の頬を平手打ちした。

「恥知らずの狐、あなたに私を叩く資格なんてないわ」

「よくも私を叩いたわね!」

木村靖子は最近、撮影現場のスタッフたちに靖子姉さんと呼ばれて調子に乗っていた、シャンプーのCMよりも浮かれていた。

彼女は、藤堂社長に寵愛される「皇貴妃」である自分が人を叩いたのに、まさか死を恐れず反撃する者がいるとは思ってもみなかった。

瞬時に「凤颜大怒(皇后の怒り)」となり、遠藤晶に飛びかかって頭を押さえつけ、連続で何発も平手打ちを食らわせた。

遠藤晶も負けじと、二人の女性は髪を引っ張ったり、顔を引っ掻いたりして、まさに妖怪同士の喧嘩を繰り広げた。

傍らにいた九条愛も同様に、木村靖子が自分の娘に飛びかかって平手打ちしたのを見て、しばらく呆然としてから我に返った。

やはり自分の娘だ。自分が気に入らなくても、他人が手を出して叩くことは許せない。

特に表舞台に出られない私生児にだ。

九条愛から見れば、木村靖子が娘を叩くことは、彼女の顔に泥を塗るようなものだった。