この男は薄情で自己中心的な人

「でも誰がやったのは誰がやったことで、私は道乃琪の罪を被るつもりはないわ」と道乃漫は言った。

「お前が行かなければならない!お前の妹は人気スターで、輝かしい未来があるんだ。こんなことで台無しにはできない」と道乃啓元は荒々しく言った。

道乃漫はもう怒りさえ感じなかった。麻痺していたからこそ、怒る気力もなかった。

目の前のこの人たちは、誰一人として彼女の家族ではなかった。

血のつながった親族ではあるが、家族ではない。

「じゃあ私が台無しになってもいいの?」と道乃漫は皮肉を込めて尋ねた。

道乃啓元は最初まだ少しの後ろめたさを感じていたが、道乃漫を見るたびに、最も思い出したくない過去と、道乃琪がまだ正式な家族として認められていないことを思い出し、最後の後ろめたささえも消え去った。

「お前はただの小さな助手に過ぎない。もともと将来性なんてないんだ」と道乃啓元は言った。「せいぜい出所後に、また琪の助手をすればいい。どうせ失業することはない。でも琪は違う。今は前途有望で、キャリアの上昇期にいる。芸能界の競争は激しく、世代交代も早い。少しでも公衆の前から姿を消せば、すぐに誰かに取って代わられる。まして刑務所に入るなんて、こんな大きな汚点があれば、出所後は芸能界に戻ることなど考えられない」

道乃啓元は自分が道乃漫のことをよく考えているつもりで、自分では温和で寛容だと思う口調で、道乃漫を説得した。「漫よ、安心しろ。お前も私の娘だ。必ずお前のことを考えてやる。できる限りお金を使っても、コネを使っても、刑期を最小限に抑えてやる。それに、お前はずっとお前の母親の病気のために忙しかっただろう?私も知っている。彼女の病気は莫大な費用がかかり、お前はこの何年も貯金もできず、全て彼女の治療費に使ってきた」

「お前が自首さえすれば、お前の母親の病気は私が責任を持つ。全ての費用は私が負担する。最高の病院に入院させ、最高の医療チームを選ぶ。たとえお前が刑務所にいても、彼女が外で世話する人がいないことを心配する必要はない」

道乃漫は道乃啓元のこのような態度を見て、まるで彼女のことをどれほど考えているかのような様子に、怒りで目が赤くなった。

前世で彼女が投獄された時、道乃啓元は夏川清未のことを一度も気にかけず、放置していた。