063 夏川清未の命を救うお金を盗ませたのは、彼女と道乃琪が考えた策だった

泥棒はますます憎しみを募らせた。そうだ、全ては夏川清翔のせいだ。

しかも証拠を記録し忘れてしまった。

でも納得できない。自分が悪いからって、なぜ黒幕の悪人が良い目を見ていいんだ?

夏川清翔だって自分と同じくらい悪い、どっちも善人じゃない!

突然、泥棒は道乃漫を見上げ、憎しみに満ちた目で「夏川清翔はろくでなしだ。でもお前も同じだ。約束を破った、許さないぞ。覚えておけ!」

篠崎汇人は「バシッ」と泥棒の後頭部を叩き、彼をふらつかせた。「何をにらんでるんだ!」

最初は道乃漫が夏川清翔を捕まえるために、悪人を見逃すのだと本当に思っていた。

しかし道乃漫は結局警察に通報し、篠崎汇人は道乃漫が約束を破ったとは全く思わず、むしろ更に嬉しく思った。

さすが神崎若様が気に入った娘だ。是非をしっかり分かっていて、状況に応じて柔軟に対応できる!

しばらくすると、警察が到着した。

道乃漫は状況を警察に説明し、警察は泥棒が殴られてアザだらけになっている惨状を見て、口角を引きつらせた。

「名前は?」警察は泥棒に尋ねた。

「柳澤木森です」泥棒は鈍い声で答えた。

しかし道乃漫にはちゃんと聞こえた。

「柳澤木森って言ったの?」道乃漫はその名前を聞いて、すぐに振り向いた。

「そうだ、何か問題でも?」柳澤木森は道乃漫を険しい目つきで見た。

彼女が約束を破らなければ、自分は刑務所に行くことはなかったのに。

道乃漫は自分の仇だ!

「その目つきはなんだ、大人しくしろ!犯罪を犯しておいて、開き直るのか!」警察は顔を曇らせた。「頭を下げろ」

道乃漫は柳澤木森の敵意に気を留めず、今は彼の名前のことで頭がいっぱいだった。

なぜなら、前世で米沢千松の妹をいじめ、米沢千松の復讐により投獄されたのは、柳澤木森を首謀者とする不良グループだったからだ。

当時、米沢千松の妹をいじめたのは全部で四人いた。

しかし残りの三人は小物で臆病で、柳澤木森がいなければ、彼らは全く何もできなかっただろう。

ただ、前世では米沢千松も詳しく話さなかったので、首謀者が柳澤木森という名前だということしか知らず、年齢や容姿は分からなかった。

目の前のこの柳澤木森が、あの柳澤木森なのかどうか分からない。