152 中のファイルはまだ保存できるのか?

「早く起動して、早く起動して!」大澤依乃は小声で呟いた。時間が迫るにつれて、緊張が高まっていった。

葉月星は手に汗を握り、机の下で両手を握りしめた。「まさか何か問題が起きないように、まさか何か問題が起きないように……」

ついに、二人の実体化しそうな視線の下で、道乃漫はパソコンの電源を入れた。

モニターの起動画面の後、ダイアログウィンドウが表示され、パスワードの入力を求められた。

道乃漫はパスワードを入力し、さらに森田林の企画書のドキュメントを開き、再度パスワードを入力した。

ところが、マウスで確定をクリックした途端、パソコンから「パチッ」という音がして、突然画面が真っ暗になった。

道乃漫はモニターを押し、本体も押し、慌てて再起動を試みた。

しかし、パソコンは全く反応を示さなかった。

この時、道乃漫のパソコン内のドキュメントは、すでに全て大澤依乃のパソコンに転送されていた。

大澤依乃はメールボックスを開いて受信し、すぐに道乃漫の企画書を見つけた。

開いてみると、道乃漫はすでに完成させており、しかも非常に美しく整理されていて、一つのミスもなかった。

各項目の横には詳細な注釈も付いていた。

大澤依乃は最初から最後まで目を通した。この企画書の形式も、企画の内容自体も、どちらも非常に優れていた。

企画書のレイアウトは緻密で、見る人の目を楽しませ、まず非常に良い第一印象を残した。

そして内容自体も独特で優れていた。

大澤依乃は渋い顔で認めざるを得なかった。公平な競争であっても、彼女の企画書は道乃漫のものには及ばないと。

大澤依乃の案は平凡で、一般的な広報会社が採用するような路線だった。

これは彼女が学生時代に、授業で学んだ一般的な事例で使用される方法を、そのまま使用したものだった。

道乃漫の案と比べると、途端に彼女の案が色あせて貧弱に見えた。

大澤依乃は唇を噛んだ。道乃漫がこれほど多くの日々を費やしたのに、全て無駄になってしまう。

大澤依乃は確認したが、修正すべき箇所が見つからず、そのまま印刷した。

道乃漫はどうしてもパソコンを起動できず、焦って汗を流していた。

高橋勉真はそれに気付き、近寄ってきた。「道乃漫さん、どうしたんですか?」

高橋勉真は道乃漫に最初に善意を示した人だった。