173 道乃漫がなぜこのような盛宴に来られるのか?

森田林は周りを見回して、道乃漫に尋ねた。「何か食べたり飲んだりしたい?アイスクリームやケーキを持ってくるけど」

「私が行きますよ」と道乃漫は笑顔で言った。

「いやいや、動かないで。兄嫁さんのためにサービスさせてよ」森田林は道乃漫を制して、「どんな味がいい?」

「うーん……アイスクリームはチョコレート味と抹茶味とプレーン味。ケーキは、ブラックフォレストがあれば」と道乃漫は笑って、遠慮なく答えた。

「本当にチョコレート好きだね」と森田林は笑いながら立ち去った。

道乃漫はテーブルの名札を見渡した。森田林の人気が下降気味なため、同じテーブルに配置された芸能人たちは、あまり人気のない者ばかりだった。

少し名が売れ始めたばかりの者もいれば、長年奮闘しても依然として無名の者もいた。

道乃漫がテーブルの状況を観察していたため、道乃琪と夏川清翔が道乃啓元の両側に付き添って入ってくるのに気付かなかった。

森田林とは違って、森田林の件は業界人なら誰もが知っていた。

それに森田林は神崎創映の株主の甥でもあり、蒼井維真は当然森田林に配慮せざるを得なかった。

しかし道乃琪に関しては、そのような待遇は望めなかった。

道乃啓元はビジネス界では一席を占めているかもしれないが、それほど大きな存在ではなく、芸能界での人脈は比べものにならないほど少なかった。

さらに道乃琪の今回のスキャンダルの話題もまだ収まっていない中、招待されただけでもましな方だった。

それも道乃啓元が方々奔走し、あの手この手で懇願してようやく手に入れた招待状だった。

蒼井維真に直接接待してもらうなんて、望むべくもない。

「お父さん、あそこにお姉さんがいるわ」道乃琪は道乃漫を見るなり表情を変え、すぐに道乃啓元の袖を引っ張って、その方向を指し示した。

道乃啓元がその方向を見ると、確かにいた。

「どうして道乃漫の席は琪より良いの?」と夏川清翔は驚いた声を上げ、道乃漫を睨みつけた。

確かに道乃漫のテーブルの人々はそれほど有名ではないものの、デビューしたばかりでファンも多い若手俳優や、演技力が認められているベテラン俳優もいた。

彼らは人気こそないものの、スキャンダルもなかった。