212 お腹が空いた

藤井天晴は食事に行こうとしていたところ、道乃漫が袋を持って上がってくるのを見かけました。「社長は今日の昼食を注文するように言われませんでしたが、お弁当を持ってきたんですか?」

「はい」道乃漫は袋を持ち上げて見せました。「給湯室で温めてきます」

「私に任せてください。社長のところへ行ってください」藤井天晴はお弁当を受け取りました。

道乃漫は遠慮せずに従いました。

そのとき、葉月香音が秘書室から出てきました。

矢崎芳彤たちはすでに一緒に食事に行っていました。道乃漫は疑いを避けるため、人目を気にして、通常は5、6分遅れて上がってくるようにしていたので、いつも矢崎芳彤たちとは時間をずらしていました。

ただ今日は葉月香音が自分でぐずぐずしていて、秘書室の他の人たちも彼女を相手にしなかったため、この時間まで居残っていたのです。