一番外側にいた人が、スタジオ内の照明機材に突然ぶつかった。
スタジオ内のプロ用照明機材は高くて大きく、とても重かった。
人にぶつかられた照明機材は、すぐに頭が重くなり、グラグラと倒れそうになった。
照明機材の長方形のライトパネルは非常に大きく、下にいる人に当たりそうになった。下にいた人は既に頭が真っ白になり、頭を抱えて屈んで叫ぶことしかできなかった。
突然「ドン」という音が聞こえ、周りが急に静かになった。
照明機材の下に屈んでいた女性は、いつまでたっても照明が落ちてこないことに気づき、まばたきをして、やっと恐る恐る振り返った。
彼女に向かって倒れるはずだった照明機材が、なぜか後ろの人のいない空き地に倒れていた。
「大丈夫ですか?」道乃漫が彼女に手を差し伸べながら、見覚えのある顔だと思った。会社のどこかの部署の同僚のようだった。
「な...なに?何が起きたの?」久保惠乃はまだ驚きの余韻の中で、少し呆然としていた。
久保惠乃は一番外側におり、周りには神崎創映の一般職員たちがいた。
みんなが口々に説明した。「彼女があなたを助けたんですよ。早く感謝した方がいいですよ!」
「すごかったです。動きが速すぎて!さっき照明機材があなたに落ちそうになった時、彼女が突然飛び蹴りをして、照明機材が反対方向に飛んでいったんです」ある女性職員が興奮して身振り手振りで説明した。「動きがかっこよかった!脚が高く真っすぐ上がって、映画よりも見栄えがよかったです!」
久保惠乃はようやく状況を理解し、急いで立ち上がろうとしたが、驚きで足がガクガクしていることに気づいた。
仕方なく道乃漫の手を借りて、引き上げてもらった。
「道乃漫さんですよね!」久保惠乃は道乃漫の手を握りしめ、感謝の気持ちを込めて言った。「ありがとうございます。本当にありがとうございます。もし当たっていたら、私、障害が残っていたかもしれません。」
「いいえ、気にしないでください。見かけたら助けるのは当然のことです。ちょっとした事です。」道乃漫は気にしていなかったが、久保惠乃がこれほど感謝してくれることで、より嬉しく感じた。