247 撮影に参加

「いいね!」高木武一は非常に満足そうに言った。「正直に言うと、道乃漫、君は俳優に向いているよ。センスがある。専門的な教育は受けていないけど、それがかえって自然な魅力になっている。素晴らしいよ。」

「合格したということですか?」道乃漫は台本を置いた。

「そうだ!」高木武一は笑った。

高木武一のアシスタントが契約書を取り出した。

道乃漫は見もせずに、神崎卓礼に渡して確認を任せた。

神崎卓礼はざっと目を通して言った。「前任者と同じ報酬ですか?」

道乃漫は演技の経験が全くない新人で、本来なら報酬を抑えることもできたはずだ。

しかし、神崎卓礼が側にいる以上、誰がそんなことを敢えてするだろうか?

「同じです。」高木武一は頷いた。

神崎卓礼は業界の慣習を理解していたので、頷いて「問題ありません。」と言った。

「一つ条件を追加したいのですが。」道乃漫が突然口を開いた。

「何か要望があれば?無理のない範囲で可能な限り対応しますよ。」高木武一はこの契約書の出演料と待遇は既に十分だと考えていた。道乃漫は完全な新人なのに、ベテランと同等の待遇を提供しているのだから。

先ほどスタジオで試験を受けた芸能人たちなら、無報酬でも喜んで出演したがるだろう。

「制作側、配給会社、そして撮影クルーは、私と神崎兄の関係を宣伝ポイントとして利用したり、映画の話題作りに使ったりしないでください。」道乃漫は契約書を受け取りながら言った。「契約書にこの点を明確に記載してください。」

彼女は最初、神崎卓礼のフルネームで呼ぼうとしたが、他人の前でそう呼ぶのは少し不適切かもしれないと思い、急遽呼び方を変えた。

道乃漫自身も少し居心地が悪そうだった。

高木武一たちだけでなく、神崎卓礼さえも、道乃漫の提示した条件がこれだとは予想していなかった。

一瞬の驚きの後、神崎卓礼の心には言い表せないほどの喜びが湧き上がった。

道乃漫は彼らの感情が利用されたり、利益に絡めとられたりすることを望んでいなかった。彼女は彼との関係を大切にし、守ろうとしていた。

素晴らしいのは、道乃漫がこれほど細やかな心遣いができ、このようなことまで考えて契約書に加えようとしていることだった。

これこそが彼の女の子だ!

彼が彼女を守っているだけでなく、同様に彼も彼女に守られているのだ!