道乃漫は声のする方を見て、驚いて叫んだ。「木村先生!」
木村成真が歩み寄り、道乃漫と握手した。「道乃漫、やあ、こんにちは」
「木村先生、こんにちは。まさか先生が直接迎えに来てくださるとは思いませんでした」道乃漫は驚いて言った。
「ハハハ」木村成真は笑った。「君は私に大きな助けをくれた。そうでなければ、この映画は撮影できなかっただろう。君が急いでここに来てくれたんだから、もちろん私が直接迎えに来なければね。神崎若様と高木兄にも安心してもらえるだろう」
木村成真はそう言いながら、連れてきた助手と一緒に道乃漫たち三人の荷物を受け取った。
「いいえ、私たち自分で持ちます」道乃漫は慌てて辞退した。
「遠慮しないで」木村成真は爽やかに笑った。
道乃漫はそれ以上辞退しなかった。
「まずはホテルに戻ろう。今日は半日だけ撮影した。午後は脚本家と一緒に君の役について説明するよ。明日から本格的に撮影を始める。いいかな?」車に乗り込むと、木村成真が言った。
「はい、大丈夫です」
ホテルに着くと、木村成真は道乃漫たち三人にまず荷物を整理して休息するよう言い、午後3時に脚本家と一緒に来ることにした。
道中で木村成真は説明していた。撮影地は西浜市の郊外で、そこに撮影用のセットを仮設したのだと。
その近くにはホテルがないので、毎日市内と郊外を往復することになる。
こちらの撮影条件はかなり厳しいが、道乃漫は気にしていなかった。
3時過ぎ、木村成真は三人の脚本家を連れてやって来た。
脚本について話している最中、木村成真の携帯が鳴った。
取り出して見ると、木村成真は嬉しそうな顔をした。すぐには出ず、むしろ道乃漫に言った。「道乃琪からの電話だ」
道乃漫はすぐに理解した。「きっと出演料のことを聞いてくるんでしょうね。時間を考えると、そろそろですもの」
木村成真は拳を握りしめた。「彼女からの連絡をずっと待っていたんだ!」
久保惠乃:「……」
河野萌:「……」
三人の脚本家:「……」
木村成真は本当に我慢の限界だったようだ!
木村成真は気持ちを整えてから電話に出た。「もしもし」
「こんにちは、木村監督」道乃琪が言った。「道乃琪です」
「ああ、道乃琪か、こんにちは」木村成真は言ったきり、続きを言わなかった。