第145章 態度の変化

しかし伊藤佳代は自分に言い聞かせていた。橋本東祐はやっと目覚めたばかりで、元気がなく、ぐったりしていて、人と話さないのも当然だ。そうでなければ患者とは言えないだろう。だからそれは自分の気のせいかもしれない。

でも橋本絵里子までそう言うので、伊藤佳代は心の中で何となく不安になった。

「もういいの。お父さんはまだ病気で、傷も痛むはずよ。お父さんは話す元気がないだけだから、あまり考えすぎないで」橋本絵里子の頭を撫でながら、伊藤佳代のその言葉は橋本絵里子を慰めているのか、それとも自分自身を慰めているのか分からなかった。

夕方になると、母と娘三人のうち誰かは家に帰らなければならず、誰かは残って橋本東祐の世話をしなければならなかった。

伊藤佳代が何か言う前に、橋本東祐が先に口を開いた。「今夜は奈奈が帰って、絵里子が残って私の世話をする」

「それはよくないでしょう?」伊藤佳代は眉をひそめた。彼女は橋本奈奈を残そうと思っていた。結局橋本さんは目を覚まし、最初に目にしたのが絵里子だったのだから、絵里子はこれ以上苦労する必要はないはずだった。「昨日は絵里子が一晩中付き添ったんだから、今日は橋本奈奈と交代して、あ、明日、明日の夜に絵里子が来ればいいじゃない」

伊藤佳代の当初の計画では、橋本絵里子に橋本東祐が目覚めるまで付き添わせるつもりだった。

橋本東祐が目覚めた後は、当然橋本奈奈に世話を任せるつもりだった。

橋本東祐が突然要求を出してきたことで、伊藤佳代は完全に予想外の事態に直面した。

以前の橋本家では、このような「些細なこと」はすべて伊藤佳代一人が采配していた。橋本東祐は決して意見を述べることはなく、まして自分から要求を出すこともなかった。今日はどうしたというのだろう?

もしかして橋本さんが目覚めて最初に見た人が絵里子だったから、いわゆる刷り込みとかいうやつで、本当に絵里子を大切に思うようになったのだろうか?

突然どう判断していいか分からなくなった伊藤佳代は呆然として、どう反応し、どう手配すればいいのか分からなくなった。

「じゃあ、今夜は私が残ります」伊藤佳代が話す前に、橋本絵里子が先に言った。

「絵里子、大丈夫?昨日の夜もほとんど寝てないでしょう」伊藤佳代は少し焦って言った。