「それに今、生徒たちは授業中です。保護者の方、お帰りください。お嬢さんの勉強の邪魔をしたくないでしょう?本校では、教職員と生徒以外の方の校内への立ち入りは禁止されています。ですので、保護者の方はお帰りください。何かございましたら、お嬢さんが下校してからお話しください。今日は木曜日ですし、明日は休校です。」
校長がそう言った以上、門衛は当然伊藤佳代に門を開けて校内に入れることはできなかった。
前回伊藤佳代を校内に入れた件について、校長は責任追及こそしなかったものの、既に門衛たちに口頭で警告していた。誰でも入れてはいけないと。
保護者会でも、子供の父親が既に来ているのに、後から母親が来るなんてことはない。平泉高校の保護者会は、いつも保護者一人だけを呼ぶのが慣例で、二人とも来る必要はないのだ!
夫婦二人とも子供の成績を気にかけて、どうしても二人で来たいというなら、前後に分かれて来るなんてことはない。明らかに何か問題がある。
そのため、校長が伊藤佳代を見て怒り心頭なだけでなく、門衛もこの保護者を恐れ、どうしても門を開けようとはしなかった。
「開けてくれないの?!」門前で阻止され、伊藤佳代は顔を真っ赤にして怒った。「私は初めて来たわけじゃないでしょう?騙そうとしてるの?前回来た時、橋本奈奈の母親だと言ったら、入れてくれたじゃない?どういうつもり?私の娘に会わせないなんて、警察を呼びますよ!」
「保護者の方、本当に通報されても、私たちにはどうしようもありません」門衛は笑った。通報するなら、してみろ。見ていてやるよ。
「あなた...」伊藤佳代は冷笑いを浮かべた。「いいわ、門を開けないのね。私の娘に会わせないのね?私に方法がないと思って?」伊藤佳代は袖をまくり上げ、歯を食いしばり、通行人の異様な視線も気にせず、鉄門によじ登り、脚を上げ、学校に侵入しようとした。
「おやおや、まいったな!」門衛は呆然とした。「早く、何をぼんやりしてるんだ、校長先生に電話しろ」
「こんな保護者は初めてだ!」校長は机を叩いて怒った。