032 キスしてもいい?

賀川礼は鐘见寧を抱きながら個室を出る時、鈴木最上は会計に向かい、賀川野と木村海は後ろを歩いていた。

「海兄、兄さんは僕を殺すかな?」

「しないよ」

賀川野は目を輝かせ、「本当?」

木村海:「殺人は違法だから」

「……」

「兄さんは新婚だし、前途有望。お前のために刑務所に入るのは割に合わない」

賀川野は落ち込んだ顔で、「鈴木兄の方が全然可愛いよ」

「奥様をナイトクラブに連れて行ったのは、彼が調べ出したんだぞ」

賀川野は狂ったように思った。兄の周りの人たちは一体何なんだ!

——

蘭亭に戻ってから、鐘见寧は先にシャワーを浴びた。

賀川礼を長く待たせたくなかったので、急いで済ませ、髪も乾かす暇がなかった。タオルで拭いただけで、まだ半濡れのまま肩に垂らしていた。

「髪を乾かさないの?」賀川礼はスマートフォンで電子文書を閲覧していた。

「後で乾かすわ。先にシャワーを浴びて」

鐘见寧が化粧台の前に座り、スキンケアをしようとした時、思いがけず賀川礼が浴室からドライヤーを持ってきて、コンセントに差し込み、彼女の濡れた髪を集めて……

ドライヤーのブーンという音とともに、彼の指が温風と一緒に、優しく彼女の髪の間を通り抜けていく。

彼の動きは優しかった。

温風が髪に当たり、シャワーを浴びたばかりで、彼女の肌は薄いピンク色を帯びていた。

彼らはただの契約結婚なのに、賀川さんはやりすぎだ。

彼は彼女の気持ちを気にする必要もないし、迎えに行く必要もないし、髪を乾かす必要もない……

鐘见寧は膝の上の指をゆっくりと握りしめた。

賀川礼がドライヤーを切ると、彼女は振り向いて、「賀川さん、ここには他人はいないから、そこまでする必要はありません」

「他人がいなくても、私たちは夫婦だ」と賀川礼は言った。

「わかっています」

賀川礼は暗い眼差しで彼女を見つめた。

まっすぐで、熱い。

その審査するような視線は直視できないほどだった。

鐘见寧は、自分の言葉が少し恩知らずだったことを知っていた。彼が優しくしてくれるなら、ただ受け入れればいい。

付き合いは長くないが、賀川礼は彼女に多くのものを与えてくれた。