誘惑、
身を任せる?
鐘见寧は息を飲み、急いで賀川礼に電話をかけたが、繋がらなかった。鈴木最上と木村海にも連絡が取れなかった。約30分前、賀川礼から彼女にメッセージが来ていた。
ただ、彼女はダンスの練習中で気付かなかった。
【立坤ホテルにいるよ。ここのデザートが美味しいんだけど、食べたい?】
練習着も着替える暇もなく、彼女は急いで外に走り出し、車のキーを手に取り、慌ただしい様子だった。
「お嫂さん、どこ行くの?」賀川野はリビングのカーペットに座り、テレビを見ながらゲームをしていた。
「ちょっと用事があって。」
「一緒に行くよ。」
「いいの。」
「もう暗くなりかけてるし、一人で出かけるのは危ないよ。」
賀川野はわかっていた。兄は今や異性に目がなく、お嫂さんに何かあったら自分を生きたまま剥ぐだろう。だから彼はパジャマ姿のまま、スリッパを引きずりながら助手席に飛び乗った。