終わった時、鐘见寧はもう力が尽きていた。
賀川礼は身をかがめ、彼女の体を拭いてベッドに運び、その後で自分がシャワーを浴び、浴室を片付けた。
彼女を抱きしめながら、彼は安心感を覚えた。
鐘见寧は昨夜疲れ果てていたため、遅くまで寝ていた。目が覚めたのは午前10時過ぎで、驚いたことに賀川礼がまだ隣にいた。彼は寝坊することはめったにない。
普段なら、自分が起きる頃には、彼はすでに出勤している。
決まり切った生活リズム。
彼女は体を翻して、しばらく彼を見つめていたが、彼の携帯が振動し始めると、慌てて視線を逸らした。
賀川礼は着信を確認して電話に出た。「もしもし」
「賀川さん、昨夜薬を盛られたって聞いたぞ!」
「……」
賀川礼は頭が痛くなってきた。
なぜみんな薬を盛られたことばかり気にするのか。
それにしても、この件がどうやって広まったのか!
身内が知っているのは理解できるが、どうしてこの大口たたきまで知っているのか。眉間を揉みながら、「どうやって知ったんだ?」
「安心して、この件を知っているのはごく少数だよ。あのホテルが俺の家のものだからね」相手はニヤニヤ笑いながら言った。
賀川礼は諦めた。そのことをすっかり忘れていた。
「他に用件がなければ切るぞ」
「ちょっと待って、大変なことになったんだ」
「話せ」
「晗奈姉が岸許叔父ちゃんを家から追い出したって」
賀川礼は眠気が吹き飛んだ。「これからは、岸許豊令は俺の叔父ではない」
「ああ、じゃあ俺の叔父でもなくなったな」
「……」
賀川礼は呆れた。
「岸許家は朝から大騒ぎで、すごく面白かったらしいよ。現場にいなかったのが残念だ。いれば、晗奈姉を応援したのに。さすが俺が好きだった人だ、俺の目に間違いはなかった」
相手は長いため息をついた。「残念だよ。晗奈姉は俺のことが好きじゃなかった。もし当時俺が彼女を振り向かせていたら、賀川さん、俺のことを義兄さんって呼ぶことになってたかもね」
「あの時、もう少し頑張っておけば良かったなぁ」
賀川礼は眉間を揉みながら、「寝言は寝て言え」
「岸許豊令も自業自得だよ。何も問題なかったのに、なんで彼女を怒らせたんだ」
賀川礼が電話を切ろうとした時、相手はまた咳払いをして、もごもごと何か言いたそうにした。「賀川さん、もう一つ」
「続けろ」