167 賀川さんがカスタマーサービス?不可解な誘拐

連絡先どころか、名前さえ知らない。まるでその人は虚空から現れ、煙のように消えてしまったかのようだった。

江口晗奈は仕事が多く、一度忙しくなると、あの茶色い子犬のことを考える余裕もなくなった。

たまに前回偶然出会ったホテルに行っても、もう二度と会うことはなかった。

ある時、鐘见寧の家で食事をしていた時、賀川礼が突然聞いてきた。「家政婦さんを雇ったんじゃなかったの?どうしてうちに来るの?」

「もう辞めてもらったわ」江口晗奈は平然と嘘をついた。

「理由は?」

「料理が美味しくなかったから」

賀川礼は疑わしげだったが、何も異常は見つけられなかった。

「寧、食事の後買い物に行かない?」江口晗奈は話題を変えた。

「ネットショップを始めたばかりで少し忙しいの。それに今夜は実家で食事があるから。また今度ね、私から誘うわ」

「いつオープンしたの?どうして教えてくれなかったの?リンクを教えて、応援したいわ」江口晗奈はアドレスを聞いた。店名は【三平二満】で、現在七、八種類の線香と、多くの香札と合香珠を扱っていた。「この名前は誰が付けたの?」

「おばあちゃんよ」鐘见寧は笑って答えた。

生活が順調で満足しているという意味だった。

賀川野は【重生之我在網上賣薫香】という名前を提案した。

最近このような店名が流行っているらしい。

梁井佳音は【風伝花信】を提案した。

お爺さんは直接【東方香韻】にしようと言った。

鐘见寧は結局おばあちゃんが付けた名前を使うことにした。そのことでお爺さんは少し不機嫌になり、賀川野が直接言った。「おばあちゃん、お爺ちゃんはきっと、あなたが付けた名前は最悪で、自分の案の方が良いと思ってるよ」

自分の妻は疑わしげに彼を見た。

お爺さんはこの小僧を殴り殺したくなった。

江口晗奈はたくさん購入し、友人へのプレゼントだと言った。「友達に試してもらって、良かったら宣伝してもらえるわ」

「ありがとう」

「私たちは家族なのに、何を遠慮してるの。良い商品も宣伝がなければ売れないわ。でも安心して、あなたのお店だとは言わないわ。ただの友達のお店って言って、気に入ったら再購入してくれるでしょうし、気に入らなければそれまでよ」

鐘见寧は笑顔で頷いた。

彼女がこの小さな店を開くことを、賀川礼は支持していた。