月の光は青白く、百鬼夜行の様相を呈していた。
岸許豊令は酒を飲んでいて、血気が逆流し、目尻が震え、心臓が喉から飛び出しそうなほど激しく鼓動していた。
「い、妹よ?」
「お兄ちゃん、私のところに来てくれなくなったね」その顔は、これ以上ないほど見覚えのあるものだった。
幼い頃から見守ってきた妹だ。いつも優しく微笑んでいた。
しかし岸許豊令は蒼白になるほど怯えていた。壁に身を寄せていた。
そうすることで、少しは安心できるかのように。
指で壁を探りながら、ようやくスイッチを見つけた。パチパチと何度か押したが、どうしても明かりはつかなかった。
そのとき、ドアの隙間から、外の非常口誘導灯の緑色の光が、部屋の中に漏れ込んでいた……
緑色の光は、この状況下で、不気味なほど息苦しい雰囲気を醸し出していた。