その後、樱庭司真は和楽園に引っ越してきたが、江口晗奈は忙しかった。叔母の命日が近づいていたため、仕事以外の時間のほとんどを、お寺で大婆様と過ごしていた。
法要は簡素で、その日は梁井佳音と賀川野を除く賀川家の者全員が参列した。
江口晗奈は賀川洵と再会した時、彼を強く睨みつけた。
賀川洵は眉を上げた。
自分は彼女を怒らせるようなことはしていないはずだが。
誰が彼女を怒らせたのか、随分と機嫌が悪いようだ。
「お前、晗奈を困らせたのか?」賀川様は声を潜めて尋ねた。
「あの性格で、私が彼女を困らせたら、許してくれるはずがないでしょう?」賀川洵は子供の頃、彼女をからかったことがあり、江口晗奈に追いかけられた。
「お前は叔父なんだから、彼女に優しくするんだぞ。」
「分かっています。」