木村海は最近悩みが多く、時々上の空になってしまい、周りで起きている異変に気付かないほどで、鐘见寧にまでその様子を察知されてしまった。
「最近ちゃんと休めてないの?」
「そうじゃない」
「従姉妹にまた何か頼まれたの?」
鐘见寧は、江口晗奈が時々彼に仕事を頼むことを知っていた。
木村海はただ淡く微笑むだけだった。
江口晗奈と樱庭司真のことは、現在木村海と掃除のおばさんしか知らなかった。
彼女が何かをしようとする時、木村海が婉曲に断ると、江口晗奈は笑って言った:「木村海……」
「私たち仲間じゃない?」
「同じ船に乗ってる者同士なのに、私を断るの?」
木村海は気が狂いそうだった。
誰があなたの仲間なんかになりたいものか。
ただ最初に旦那様に報告しなかったことで、時間が経てば経つほど、言い出せなくなっていった。今は従姉妹がこの男に飽きて、嫌になって、厭きて、二人が自然に別れることを願うばかりだった。
そうすれば何事もなかったことにできる。
しかし現状を見る限り、別れる気配は全くなかった。
彼女は時々お酒を飲んで、木村海を呼び出し、わざわざ校門まで迎えに来た。
二人で映画館を貸し切りにした。
プライバシーの守られたレストランで食事をした。
……
木村海の知る限り、ほとんど江口晗奈が支払っていた。
彼はため息をついた:
従姉妹はいつから富豪マダムのように若い男を囲うようになったのか。
とはいえ、この樱庭先生は確かに容姿端麗で、彼女に対して優しく気遣いもする、女性なら誰でも心惹かれるだろう。
この二人の関係は、同棲というよりも、まるで本気の恋愛のようだった。
しかし帝都はそれほど大きくない。
火遊びをする者は、火傷をしやすい。
いつ露見するかもしれず、そうなれば彼は終わりだ。
明らかに、あの樱庭先生は正式な関係になりたがっているし、従姉妹も元々大胆な性格なので、当事者たちは心配していないのに、傍観者の彼は毎日が火の車だった。
時々鐘见寧の送り迎えをする時も、つい上の空になったり、気が緩んだりすることがあった。
賀川礼が時々江口晗奈の様子を尋ねると、木村海は表面は平静を装っていても、内心は恐怖で狂いそうだった。
「従姉妹は最近、特に変わったことはありません」
傍らにいた鈴木最上も、内心ドキドキしていた。