253 公開：賀川さん、名分を与えてくれない（4話、概要）

鐘见寧は車の中で聞きながら、焦りと怒りを感じていた。

彼女が当初、藤崎朗真を金で許すことを選んだのは、もちろん計算があってのことだった。結局彼は精神鑑定書があると言っており、それを提出すれば、将来逮捕されて法廷に立っても、無罪放免される可能性が高かったからだ。

それなら先に補償金を受け取った方がましだった。

藤崎家は息子がいずれ問題を起こすことを知っており、とっくに逃げ道を用意していた。

精神鑑定書？

その魂胆は、まさに悪質で陰険そのものだった。

「賀川さん、なぜそんな金に目がくらんだ女のために、私たちと完全に仲違いするのですか。あの時のことも、うちが見逃してあげたのに」藤崎奥様は歯ぎしりしながら言った。

「あなたが私を見逃した、と？」賀川礼は冷笑した。

「黙れ！早く黙れ！」藤崎涛真は焦った。

過去を蒸し返されては、彼らの家は耐えられない。

そしてこの時、ネット上の世論の風向きも一方的だった。

藤崎朗真に被害を受けた被害者が現れ、当時薬を盛られて汚されたこと、その後藤崎家から1億円を受け取り、仕事も斡旋されたため、妥協したと語った。

すぐに、次々と匿名の被害者が投稿を始めた。

ほとんどが日時や場所を特定しており、中には藤崎家との振込記録まで公開する者もいた。

この時、介入する人々は多かった……

賀川家、盛山家、岸許家、そして賀川礼の友人たち。

世論は風に靡く草のように、藤崎家の過去の秘密を余すところなく暴いていった。

【あいつのやったことなら、千刀万剐の刑にしても足りないくらいだ。藤崎家もよく装うもんだ、まるで藤崎朗真が被害者であるかのように言い立てて。】

【厚かましい限りだ。こんな甘やかし方をする親がいるからこそ、今のような人間になったんだ。】

【こんな奴は、死んだ方がマシだ。】

【それにしても、早く立ち去ってくれないかな。俺、飛行機を降りてから、もう1時間も渋滞に巻き込まれてるんだけど。】

……

藤崎涛真はネット上の世論を察知し、妻を連れて立ち去ろうとした。

しかし藤崎奥様は応じなかった。

「賀川さん、あの鐘见寧は良い人間じゃありません。きっと彼女が息子を誘惑したから、息子は過ちを犯したんです。彼女の言葉を信じてはいけません。このような事は、一方的な話では済まないはずです！」藤崎奥様は取り乱して言った。