314 殺人の武器で、彼を神の座から引きずり下ろす(2話)

その娘は賀川洵の携帯をじっと見つめ、密かに歯を食いしばった。この番号は明らかに彼のものではなかった。

しかし、賀川洵のような人物が複数の携帯を持っていても不思議ではない。

彼女は笑顔を浮かべたまま、「荷物を届けに来たの?」

「ああ」

「あなた…」

「後輩に頼まれてね。年上として断りづらくてさ」

娘は軽く笑った。

その言葉が可笑しくて仕方がなかった。

実の父親だって断れる人なのに、後輩を断れないなんて。盛山社長のような優しくて柔らかい性格の若い娘なら、きっと家でいじめられているに違いない。

誰があなたに命令できるというの。

「行こうか、私に食事を奢ってくれるんじゃなかったのか?」賀川洵は彼女をじっと見つめた。

彼女は苦笑いを浮かべた。

やはり、

避けられないものは避けられない。