318 叔父:盛山若社長、君を私に任せてくれた(2更)

ここは先輩の縄張りだ。菅野望月は魂が抜けそうになった。

問題は……

以前の賀川洵はこんな人じゃなかったのに。

どんなに誘惑しても、彼はほとんどの場合、泰山のように動じない様子だった。

紳士的で、冷静で、自制的で、理性的で……

でも今の賀川洵は、彼女の知っている人とは全く違う。この2年の間に何かショックを受けたのだろうか?

心臓が激しく鼓動し、息が詰まりそうになった時、賀川洵は身を引いた。

冷たい風が首筋に入り込んできたが、寒くは感じず、むしろ体中が熱くなっていた。

「寒いから、先に帰りなさい」

賀川洵はそう言いながら、親切にも彼女の襟元のセーターを直してくれた。

菅野望月は首筋が熱く、彼の突然の行動に頭の中が混乱していた。

何をしに来たのかも完全に忘れてしまい、その結果……

道に迷ってしまった。

盛山庭川は彼女が戻ってこないのを見て、電話をかけ、わざわざ迎えに出てきた。

「トイレに行くだけで迷子になるなんて、君も大したものだね」盛山庭川は呆れ顔だった。

師匠は多くの弟子を取ってきたが、菅野望月は才能と天性に恵まれた部類だった。ただ、途中からの入門で基礎知識が薄く、師匠は他人に任せるのを不安に思い、彼この先輩に面倒を見させることにした。

菅野望月も問題があれば、まず彼に相談していた。

そのため、二人の仲は特に良かった。

ただ残念なことに、後に転職してしまった。

先輩と後輩という関係で、他の人より親密な間柄だった。

「私のせいじゃないわ。初めてあなたの家に来たのよ。庭が広すぎて、しかも暗くて、方向がわからなくなっちゃった」

盛山庭川は低く笑った。「君の頭がぼんやりしていて、何を考えていたんだろうね」

考えていたのは……

賀川洵のこと?!

「お酒を飲みすぎたのかもしれません」菅野望月は言い訳をした。

部屋に入ってから、やっと思い出した。噛まれたのに、肝心なことを忘れてしまい、賀川洵は彼女の頼みを承諾していなかった。

やはり、

色に惑わされるとろくなことがない!

「お料理が冷めてしまいましたから、温め直しましょうか」盛山文音がちょうど使用人を呼ぼうとしたところ、菅野望月に断られた。「もう満腹です。温め直す必要はありません」

「外は寒かったでしょう?顔が風で赤くなっていますよ。温かいお茶でも飲んで体を温めましょう」