秋月策人番外(19)おばあちゃん、私の音

彼女は本能的にもがき、声を押し殺して言った。「あなた、狂ってるわ。ここは外よ、人に見られたらどうするの!」

「大丈夫、誰もいないよ」

この時、夜はすでに更け、栄田锦は周囲に誰もいないことを確認してから安心し、彼女の腰に回された彼の手を振りほどき、振り返って彼を見た。「これからは外では、少し気をつけてね」

「君は不機嫌だね」この言葉は、断定的な口調だった。

「そんなことないわ」

「江口晗奈姉さんのせい?」

栄田锦の目の奥に一瞬異色が走った。彼女は秋月策人がこれほど鋭いとは思わなかったが、強情に言い返した。「彼女とは関係ないわ」

秋月策人は突然身をかがめて近づいた。「本当に?」

「もちろん…」栄田锦の言葉が終わる前に、彼はすでに彼女にキスをしていた。彼女の呼吸が沈み、ここは外なのに、彼は狂ったのか?

彼を押しのけることができず、栄田锦は急いで二歩後退し、背中が玉蘭の木に当たり、枝が揺れて花びらが落ちてきた。そしてこのキスは、ますます深くなり、秋月策人は手を伸ばして彼女の首の後ろを支え、掌は乾いていて熱かった。

ここは外なのに…

もし誰かに見られたら終わりだ。

彼は本当に狂っている!

ただ、秋月策人という人は常識に従わない人で、彼がどれだけ狂ったことをしても、それはすべて理にかなっているように思えた。そして栄田锦は彼に引っ張られ、引きずられ…

唇の熱さが、理性を蝕んでいく。

体の本能に従うしかなかった。

「秋月策人、あなた本当に狂ってるわ!」栄田锦は歯を食いしばった。

彼は笑いながら彼女を見た。「これは狂気じゃなく、普通のことだよ。君の人生はもともとこうあるべきなんだ」

栄田锦はしばし呆然とした。

「僕は江口晗奈姉さんに対する気持ちはとっくに手放したよ。今は普通の友達、姉弟の関係だ。彼女はもう結婚したし、僕の性格は君も知ってるだろう、物事を隠せない。もし本当に彼女に対して不純な考えがあったら、賀川さんと樱庭若様はとっくに気づいているはずだ」

「賀川さんの性格は君も分かるだろう。実は樱庭司真も狂人だよ。彼がどうして恋敵が彼の妻に近づくのを許すだろうか」

「僕は君だけが好きで、君だけを愛している」

先ほどのキスは、熱く切なく、栄田锦の顔の赤みはまだ消えていなかった。

今度は彼のこの言葉に顔が熱くなった。