配合などの問題は、化粧品会社の最重要課題であり、時枝秋が相手の急所を突いたため、もはや傍観することはできなかった。
時枝秋は話を続けた。「周防社長、御社の配合に少し問題があります。もしこの点を改善すれば……」
周防社長は大笑いして彼女の言葉を遮った。「木村君、この若手タレントはどこと契約してるんだ?面白いねぇ。まあいい、今日の契約解除の件は、交通費として2万円余分に出してやろう。これで終わりだ」
「周防社長……」時枝秋はまだ何か言いたそうだった。
「私には会議があるんでね、お喋りに付き合ってる暇はないんだ」周防社長の表情が一変し、笑顔は完全に消え去った。
秘書は2万円の現金を差し出し、笑顔を浮かべながらも冷たい口調で言った。「お二人とも、お受け取りください」
まるで時枝秋がこの騒ぎを起こしたのは、この2万円を余分に要求するためだったかのように。